QNAP TS-112のHDDもLoad Cycle Countがえらい事になっていた
QNAP TS-112のHDDも WD Caviar Greenだったのでした。
NETGEAR ReadyNAS RN10200は実家の方で使っているのですが、新居(賃貸)の方で使っているNASもあります。QNAP製のTS-112です。引っ越して来てから暫くして購入したので、2年半くらいになります。その間、ほぼ24時間運転させていたのですが、特にこれと言った問題もなく安定して稼働しています。しかし、このTS-112に使ったHDDも実は Western Digital Caviar Green のWD30EZRだったのでした。つまり IntelliPark機能があるわけです。
もしやと思ってTS-112のS.M.A.R.T.情報を見てみたら、
案の定 Load Cycle Countが33万回越え!メーカー保証の30万回を越えてしまっていました。不良セクタは発生していないけど、磁気ヘッドのアクチュエータはいつ壊れても不思議はないかも?IntelliPark機能は RAIDの場合には良くないとの事ですが、TS-112は1ベイですから NAS全般にとって良くない機能だと言えそうです。
NASに使うなら WDのRedシリーズを使えという話を見かけるようになりましたが、Redシリーズが出たのは2012年頃か?TS-112を購入した頃にはまだ無かったと思います。それに、最近のRedシリーズには、また IntelliPark機能が付いているようになったという話も聞きます。
IntelliPark機能について調べてみたら、一定時間(デフォルトでは8秒)アクセスが無いと磁気ヘッドをプラッタ表面から退避場所に退避するのだそうです。プラッタ上に磁気ヘッドがあると、磁気ヘッドは高速回転するプラッタの風圧によってプラッタ表面から僅かに浮上した状態になります。そのため磁気ヘッドによる風損(空気抵抗)が発生し、これがプラッタを回転させるモーターの電力増に繋がります。そこで、HDDへのアクセスが無い間は磁気ヘッドがプラッタ上に無い状態にする、すなはち退避させてしまえば消費電力を下げることができるという理屈です。
この機能には消費電力を下げる効果はありますが、
- HDDにアクセスが発生した際に磁気ヘッドが退避した状態にあるとアクセス速度が遅くなる。
- HDDへのアクセスが頻繁に発生するNASやRAIDのような装置の場合、Load Cycle Count値が跳ね上がり、HDDの寿命を縮める事になる。
という弊害があります。
と言うわけで、もう遅いかもしれませんが TS-112の HDDについても IntelliPark機能を無効にしてみました。ただ、QNAPの Linuxは何をベースに作られているのか良く分からず、ReadyNAS RN10200にはある dpkgコマンドも TS-112にはありません。debianパッケージを簡単にインストールと言うわけにはいきません。ただ CPUは ReadyNAS RN10200 と同じような物(uname -a では armv5el と表示された)なので、同じバイナリが使えそうです。
試してみた結果、何とかうまくできたようなので、備忘録として書いておきます。
- idle3-tools をダウンロードする。
idle3-tools はここから armel用をダウンロードする。
- ダウンロードしたパッケージを Debian Linuxにコピーして、dpkgコマンドでパッケージを解凍する。
今回は ReadyNAS RN10200を使いましたが、当然PCや仮想マシン上の Debian Linuxでも良いですし、BuffaloのLinkStation も Debian Linuxベースなので dpkgコマンドが使えるようです。
# dpkg -x idle3-tools_0.9.1-1_armel.deb ./idle3-tools
# ls -lR idle3-tools
idle3-tools:
total 0
drwxr-xr-x+ 1 root root 18 Apr 14 2012 usr
idle3-tools/usr:
total 0
drwxr-xr-x+ 1 root root 16 Apr 14 2012 sbin
drwxr-xr-x+ 1 root root 12 Apr 14 2012 share
idle3-tools/usr/sbin:
total 16
-rwxr-xr-x+ 1 root root 16364 Apr 14 2012 idle3ctl
idle3-tools/usr/share:
total 0
drwxr-xr-x+ 1 root root 22 Apr 14 2012 doc
drwxr-xr-x+ 1 root root 8 Apr 14 2012 man
idle3-tools/usr/share/doc:
total 0
drwxr-xr-x+ 1 root root 56 Apr 14 2012 idle3-tools
idle3-tools/usr/share/doc/idle3-tools:
total 8
-rw-r--r--+ 1 root root 162 Apr 10 2012 changelog.Debian.gz
-rw-r--r--+ 1 root root 1424 Apr 10 2012 copyright
idle3-tools/usr/share/man:
total 0
drwxr-xr-x+ 1 root root 26 Apr 14 2012 man8
idle3-tools/usr/share/man/man8:
total 4
-rw-r--r--+ 1 root root 945 Apr 14 2012 idle3ctl.8.gz
|
- 解凍した idle3ctlをQNAP TS-112にコピーする。
解凍したパッケージの内容を見ると、usr/sbin/idle3ctl がコマンド本体で、それ以外はドキュメントと manファイルだけのようです。ドキュメント、manファイルは idle3ctlコマンドの動作には必要無いので、コマンド本体だけを QNAP TS-112 にコピーしました。
- TS-112に adminか rootで sshログインし、idle3ctlコマンドを使って IntelliPark機能を無効にする。
$ ssh admin@TS-112
admin@TS-112's password:
# cd /share/hoge
# ls -l
-rwxrwxrwx 1 hoge everyone 16364 Apr 14 2012 idle3ctl*
# ./idle3ctl -g /dev/sda
Idle3 timer set to 80 (0x50)
# ./idle3ctl -d /dev/sda
Idle3 timer disabled
|
- TS-112を一旦シャットダウンし、再度電源をオンにする。暫くLoad Cycle Count値を監視して値が増えていかないようなら成功。
今回、IntelliPark機能について調べてみて、どうやら非常に評判が悪い機能のようだとの印象を受けました。また、Western Digitalも IntelliPark機能を無効にするツールを配布していた事があるが、DOS上で動くコマンドであり全ては自己責任でというスタンス。今回使用した idle3-tools は、Linux用の同ツールが欲しいと考えた先人達が作成した物で、その技術力に驚き感謝しております。
IntelliPark機能を無効にした TS-112は何となく音が静かになったような気がします。以前は頻繁にHDDアクセスしているようなコロコロといった感じの音がしており、HDDのアクセスLEDもチカチカ点滅していたのですが、今ではHDDのアクセス音がする事が少なくなり LEDも点滅ではなく点灯した状態が長く続くようになりました。
とは言うものの、気が付くのが遅過ぎたなぁ。このHDD、あと何年もつだろうか?
|