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アップル、Xserve G5を使った新スパコン「MACH 5」を構築へ

スパコン、並列、クラスタってのが私の専門、というかメシの種なんですが・・・

　数日前のニュースになりますが、CNETの記事によると、Apple の Xserve G5（現在入手可能なのはクロック2GHzのPowerPC G5 Dual）を 1566台使ったクラスタシステム「MACH 5」が構築されるそうで、今秋稼働開始で15Tflops程度の性能が予測されるとの事。これは昨年、米バージニア工科大学の PowerMac G5 1100台使ったスパコン(Big Mac)がTOP500リストの3位に入りましたが、それを上回る性能で、NECの地球シミュレータに次ぐ第2位の性能になります。

　私の商売はスパコン上の並列Fortranの実行システム開発なんでありますが、最近のスパコンは昔のようなメインフレームと呼ばれるものは衰退し、どんどんPCクラスタで構築されるようになっておるんですな。PCクラスタってのは、そこいらに売っているパソコンを掻き集め、それこそ数百台とか数千台とかの規模のパソコンを高速ネットワークで繋ぐんです。そうやって構成した物をあたかも1台のコンピュータであるかのように制御したり並列プログラムを実行したりして高性能を出すわけですわ。

　最近のパソコンは CPU性能はとんでもなく高いのですが、ネットワーク(Ethernet)性能はスパコン的に見れば貧弱なんで、PCクラスタを組むとき普通はもっと高速なネットワークデバイスをPCIバスに突っ込むんですな。それこそネットワークカード1枚20～30万円、ネットワークスイッチに至っては32～128ポートくらいで数十～数百万円くらいしますかね。Ethernetのスイッチングハブなんざ今では数千円で売っているご時世ですが、高速ネットワーク世界の物価はこんなモンでございます。

　ところで、今回のMACH 5のネットワークデバイスは標準で付いている Giga-bit Ethernet なんだそうですな。前の米バージニア工科大学の Big Mac のネットワークは Infiniband（カード1枚 20万円）であるのに比べたら1/10くらいのネットワーク性能しかないわけ。

　スパコンTOP500リストで使われる Linpackっているベンチマークなどはネットワーク性能の影響が少ないんで、そこそこ性能が出ましょうが、実際の並列プログラムで Giga-bit Ethernet で本当に大丈夫なんですかね？何でも空気力学シミュレーションに使うと言う、要は数値風洞なんでしょう。

　あんまり書くと社内の機密漏洩になりそうなんで(^^;)詳しくは言えないのですが、同じような計算をさせておる少し前に納入した某独立行政法人のスパコン(SMPクラスタ）がありまして、このネットワーク性能は 4GB/sec あるんですが CPU演算性能：通信性能の比で言えば「アンダースペック」と考えられているわけで、こちらは 32Gflops(実効)：4GB/sec という比だったかな。（4GB/sec って速度は乱暴な例えだがDVD 1枚のデータを 1,2秒で送ってしまうと思えばよろしい。）これに対し、MACH 5 の方は 2GHz G5 2台に対して1台のGiga-bit Ethernet ですね。で、2GHz G5 2台の理論ピーク性能が 16Gflops ありまして、これの 50% 出たとしたら 8Gflops：1Gbps（125MB/sec）という比になります。あたしは目茶目茶バランス悪いと思っているんですが・・・

　まぁ担当の人は「うちらの用途ではネットワーク性能より数値演算性能の方が大事」と言ってますな。どうやら大規模な並列プログラムを実行させようなんて気はないみたいで、非並列のプログラムをパラメタを少しづつ変えて大量に流す（パラメトリック・スタディと言う）から、ピーク性能よりスループットの方が大事って事ですかね？

内ト / Jun 24th, 2004 21:39 / [ 編集 ] [ コメントする ] [ TrackBack(0) ]